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第一章 

2話)思わぬ告白??


「 ・・・実は、困っているんだ。ストーカーみたいに付きまとわれていて。
 芽生みたいな女の子が、隣を歩いてくれると、諦めてくれると思うんだよ。
 少しの間でいいから、付き合ってくれない?」
 放課後の昼下がり、下校途中でいきなり呼びとめられて、人気のない非常階段での言葉がこうだった。
「え?」
 一瞬、意味が分からなくて問い返す芽生に、優斗はにこやかな笑みを浮かべて首をかしげた。
 至近距離で、このキラキラした笑みは反則だ。
「・・あの・・その付き合うってのは・・?」
 なおも戸惑いがちに問いかける芽生に、彼の瞳が愉快気に踊る。
「芽生って、“男おとこ”ってギラギラしてないじゃん。付き合っている子とかいる?
 いなければ協力してほしいんだ。こんな事頼めるの、芽生くらいしかいないって感じだし。妙な誤解をされちゃ困るだろ?」
 ストーカーを切る事が出来ても、また変な風になるのが、イヤだしね。
 フー。と悩ましげにため息をつく様が、色っぽい。と、思うのは芽生だけではないだろう。
「ストーカーに悩まされているの?」
 もう一度聞く芽生に、一瞬だけ優斗の瞳がイラ立つようにゆらめいた。けれど、一瞬後に、元のにこやかな笑みに戻って、
「そう。困っているんだ。・・・無理強いはしないけど、こんな事むりっぽいかな?」
 と、切なげな声の調子で言ってこられて、芽生は自分にできることなら・・なんて、思ってしまった。
 ちょっとした世話焼き根性が、出てしまったのだ。
「無理じゃないけど・・・本当に私が隣にいるだけで、そのストーカー。・・諦めてくれるかなあ。」
 不安げにつぶやく芽生に
「大丈夫。芽生くらいの美少女が隣にデンと、居座ってくれたら、雅もしつこく来ないと思う。」
(び、美少女だなんて・・。)
 優斗ほどのレベルの男の子から、そんな表現されて、悪い気がしないわけがない。おそらく、言うことを聞いてもらいたいがための、お世辞も入っているはずだった。
「・・・私でよければ、付き合ってもいいよ。」
 ポツリと呟く芽生に、優斗の笑顔がはじけた。
「やったあー。ありがとう。OKしてくれるんだあ。じゃあ、早速メルアド交換しようよ。」
 言われるままに、互いの携帯を重ねて、赤外線照射をくりだし、メルアドを交換すると、
「じゃあ、また連絡するよ。」
 言うと、あっけないくらいに、優斗は芽生を置いてその場から、去って行ってしまった。
「・・・・・。」
 残された芽生は、しばらくポツンと突っ立っていたが、廊下の窓から生徒達の声が漏れ聞こえてきたので、あわててその場を離れてゆくのだった。